2021.03.16

STEAM教育ってなに? ワクワクを軸にした次世代の“学び”を解説【保存版】

いま、STEAM教育が注目される理由

そもそもSTEAMとは何かというと、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学・ものづくり)、Art(芸術・リベラルアーツ)、Mathematics(数学)の5つの単語の頭文字を組み合わせた造語。2000年代に米国で始まった教育モデルであり、STEMという理数教育に、Aの創造性教育を加えた教育概念だ。

「STEM教育なら知っている!」という声も多いかと思うが、STEAMにおける「A」の追加は、非常に重要なポイントとなる。

各論に入って行く前に、まずは各国におけるSTEMおよびSTEAM施策、および国をまたいで実施された調査を通じて、今このタイミングでSTEAMの必要性がさけばれている背景についてお伝えする。

世界は「STEM」の、日本は「A」の基盤整備が喫緊の課題

STEAMの流れを考えるにあたり、先にSTEM教育の世界的潮流を把握する必要があるだろう。日本のみならず世界中でSTEM教育の認知が大きく広がったきっかけは、2013年米オバマ政権下における、STEM教育の国家戦略発表にあるだろう。

流れとしてはこうだ。もともと米国では、以下の3点に代表される「教育と時代の乖離」が課題となっていた。

  1. 国の未来の競争力低下への懸念(中国の経済発展への危機感等)
  2. 高等技術を用いる職種の適任者不足 ※移民問題も含む
  3. STEM分野の総合的カリキュラムや教師が少ないことへの危惧

これを背景に2006年、ブッシュ政権下で「STEM教育強化 10の指針」が発表される。その後、STEM教育支援を選挙公約に掲げたオバマ氏が大統領に就任。2011年には一般教書演説において、STEM教育を優先課題に位置付けるとし、10年間で10万人STEM分野教員雇用等の具体施策を発表。その2年後に、国家戦略に位置付けたというわけだ。ちなみに、2018年トランプ政権においてもこの「米国STEM教育戦略 5カ年計画」を発表しており、政策を継続している状況だ。

出典:2013年オバマ政権下で制定された「米国STEM教育戦略」表紙

「初めからSTEAMの“A”があったわけじゃないんですね。」

そんな声が聞こえてきそうなものだが、日本と米国では課題が逆なのである。米国では、民間主導でのデザイン振興が盛んであり、2010年からは高等教育機関でのエンジニアリングやビジネスと融合したデザイン教育が進んでいる(「第5回産業競争力とデザインを考える研究会資料」より)。

米国だけではない。例えば英国でも1997年ブレア政権下より「クリエイティブ産業」政策がスタートしており、むしろ科学への態度低下に伴う科学履修者数の減少の方が課題となっている。

一方日本では、後述するがSTEMに代表される数理教育への取り組みは目覚ましいものがあるのだが、こと「A」の領域についてはめっぽう弱い。

つまり、日本的には「A」の官民連携基盤整備が必要な状況なのに対し、世界的には「STEM」の公的基盤整備の方が、喫緊の課題となっていたわけだ。

なお、各国のSTEM教育の潮流については、以下に簡潔にまとめられているので、併せてご確認いただきたい。

出典:steAm, Inc.「21世紀の教育・学習」より

我が国の将来に“ポジティブ”になれない若者たち

次に以下のデータをご覧いただきたい。日本財団が令和元年11月30日に発表した「18歳意識調査-国や社会に対する意識」の結果である。

出典:日本財団「18歳意識調査」第20回テーマ:「国や社会に対する意識」(9カ国調査)より

インド、インドネシア、韓国、ベトナム、中国、イギリス、アメリカ、ドイツと日本の17~19歳各1,000人を対象に、国や社会に対する意識を聞いた結果なのだが、我が国はいずれの項目においても9カ国の中で最下位となっていることがわかる。

また、上記が「あなた自身について、お答えください。」という設問への回答結果であるのに対して、「自分の国の将来についてどう思っていますか?」に対する回答集計が以下となる。

出典:日本財団「18歳意識調査」第20回テーマ:「国や社会に対する意識」(9カ国調査)より

つまり、日本の将来が良くなると考える人が9.6%(約10人に1人)しかおらず、社会を自分で変えられると思ってる人が18.3%(約5人に1人)にとどまり、結果として国の将来に対する展望を持てない人が32.0%(約3人に1人)にものぼっていることが分かる。全て、この国の将来を担う若者たちが、だ。

クリエイティブ力の育成が不可欠

もう一つ、別の側面からも見てみたい。経済産業省が実施した日本のオープンイノベーション(※)に関する調査のなかに、「競争力を維持するために、自社の経営モデルの抜本的な変革を率いていく準備はできているか」という設問があり、その回答の集計結果が以下となる。ここでも日本が最下位となっているわけだ。

出典:経済産業省「Society 5.0時代の オープンイノベーション、スタートアップ政策の方向性」より

※オープンイノベーション:自社や自団体だけでなく、他社・大学・地方自治体・そのほかソーシャルセクターなど多種多様な異業種・異分野とコラボレーションし、各々が持つ技術・アイデア・サービス・データ・知識・ナレッジ等を組み合わせ、革新的なビジネスモデルや研究成果、製品開発、サービス開発、組織改革、行政改革、地域活性化、ソーシャルイノベーション等につなげるという、イノベーションの方法論のこと

さらに別調査で、同じく経済産業省によるベンチャー企業支援策に関する調査結果があり、その中で「起業意識の国際比較」という統計調査結果によると、こちらでも日本のレーダーチャートの全体面積が著しく低いことがお分りいただけるだろう。

出典:中小企業庁作成資料「起業意識の国際比較」チャプターより

起業や経営者になることが全てというつもりは毛頭ないが、このように、我が国にはイノベーションを起こす基礎となる「ビジョンを描く力」、すなわち「クリエイティブ力」の育成が不可欠な状況となっていることが、産業界のデータからも推測できる。

自己受容感を高めるためのSTEAM教育

じゃあ日本ってもうダメなの?と聞こえてきそうなものだが、そんなことはない!

日本には誇るべき「ものづくり」や「おもてなし」の文化があり、それらを実現する技術力とクリエイティビティを掛け合わせた独自の国力構造に対し、諸外国は大いにプラスの評価を与えてくれている。かつて『WIRED』日本版では、この領域を総じて「ウォームテック」と表現し、クールジャパンの次なる日本の魅力戦略として特集をしていたくらいだ。

要するに、実力がないのではなく、「マインド(気持ち)」面でのネガティブ要素が大きいと言えるだろう。つまり、総じて「自信がない」のだ。

だからこそ、若者の貴重な“学び”の場である教育現場において、従来から行われてきた理数教育ではカバーできない「自己受容力」を高める必要があるとの危機感から、創造性教育をプラスしたSTEAM教育への需要が大きく高まっていると言える。

大人サイドのマインドセットも必要不可欠

STEAM教育を推進するためには、その学びを提供する大人サイドの意識変容も重要な要素となる。

これまで多くのSTEAM実践者にお話を伺ってきたが、彼ら彼女らが共通して「大人自身がワクワクすること」とおっしゃっている。つまり、子ども達がワクワクしてSTEAMに向かうためには、先生方や親御さんが職業や知見としての専門家、研究者、科学者である必要はなく、各々の言葉の定義を大きく緩やかにし、誰しもが“気持ち”としてアーティスト、研究者、科学者、ひいては発明家であるとしてワクワクすることが大切なのである。

またこちらはテクニックとなるが、STEAMのような知を創り出す学びの中においては、オープン・クエスチョン、すなわち二者択一の答えがない問いかけが、大変重要な役割を果たす。良いオープン・クエスチョンは子ども達によるSTEAMの学び(体験)を促し、時に新しい意味を与え、大いに広げてくれるものとなる。

高度情報化社会の中、知識を持っていることは、創造的な知を育むための必要条件ではなくなった。先生や親御さん凝り固まったマインドセットを変え、創造の喜びを肯定し、期待し、自信・自負心などを持つ形(STEAM Mindset)に変化した時、子ども達の学んでいる姿を見る視点が変わり、彼ら彼女らが良きパートナー、ファシリテーター、共同研究者、共同創作者へと変わっていくこととなる。

(STEAM JAPAN 内記事より)